キャッチ&リリースされたイワナの成長 生き残り 釣られやすさ

 

これは北海道大学大学院水産研究科による調査。

調査を行った河川は北海道北部を流れる4河川である。

各河川において、野外調査を2回行った。1回目の調査「調査1」では調査区間内の個体を釣られた個体『釣獲個体』と釣られなっかた個体『コントロール個体』にグループ分けすることを目的とした。

日の出直後から正午頃まで釣りを行った。釣り餌は市販されている養殖ブドウ虫。仕掛けは道糸、ハリスともに0.6号、針は渓流9号

釣った魚の針の外し方は、針を飲み込まれた場合のみ、プライヤーを使用し針を外した。針を外した後、釣獲個体をバケツに入れ、数匹釣るごとに河川内に数か所設置したいけすに移した。

釣り終了後、その日のうちに電気ショッカーを用いて、200または300vの電圧をかけて河川に電流を流し、釣られなかった個体を可能な限り捕獲し、それらを、コントロール個体とした。電気ショッカーによる影響を考慮するため、いけすの中の釣獲個体にも電気ショックを与えた。

釣獲個体およびコントロール個体の体調を計測したのち、生存していた個体に、個体識別を可能にするためアンカータグを取り付け放流した。

 

2回目の調査「調査2」は調査1から約50日後の7月14から8月3日にかけて行った。

調査2では釣獲個体とコントロール個体の採捕を目的とした。採捕の方法は、調査1で行った方法と同じである。

結果として、針を食堂まで飲み込み、数分で死亡する個体が見られた。釣獲個体のうち釣獲数分後以内に死亡した個体は282個体中19個体であった。調査1での釣獲死亡率は6.7パーセントでありこれは過去の研究結果と近い値であった。しかし、死亡せずにキャッチ&リリースが行われた個体については、成長率や生存率の低下は認められなかった。

また、釣られやすさは、釣獲経験のある個体とそうでない個体で同等であった。

ニジマスを用いた実験では、針を飲み込み、食堂にかかった場合でも、無理をせずに糸を切れば、2か月後には約6割の個体で針が排出され、生存率は2倍以上になると報告されている。本研究では、釣られやすさは釣獲経験の有無と関係あるという確証は認められず、キャッチ&リリースされ個体は、釣り針を学習するため2回目の釣りでは釣られにくくなるという説、および釣られた個体は釣られやすい個体であるため2回目の釣りでも釣られやすいという説のどちらとも異なる結果である。

釣られやすさの傾向は種間、、個体間によっても異なり、そのメカニズムは非常に複雑だと考えられる。

本研究では、大型個体および成長率の高い個体が釣られやすかった。

サケ科の魚類では、大型個体は餌が多く流れてくる位置に定位し、餌をめぐる争いにも強く、その結果、摂餌頻度が高いことが知られている。

このことは、大型個体ほど釣られやすい原因一つであると考えられる。一方、成長率の高い個体が釣られやすかった理由として、成長率の高い個体は代謝率も高いため、摂餌頻度が高いことがあげられる。そのため、成長率の高い個体ほど釣られやすかったのかもしれない。